日本株よりも米国株に投資すべき理由ーコロナウイルスワクチンの顛末から
経済活動の再開と、感染の抑制を両立させる対策の切り札として、日本にもファイザーのワクチン第一陣が到着し、医療従事者を対象としてコロナウイルスのワクチン接種がはじまりました。
私も医療従事者のはしくれとして、来週にワクチン接種をうけることができるとの連絡がありました。
しかし、高齢者からその先の一般の人に対するワクチンの確保については、はっきりとした目途が立っていません。
この記事からは、担当大臣以下が相手にされず、総理が交渉にひっぱりだされてファイザー社に土下座するしかない、大変残念な様子が浮かび上がってきます。
昨年よりワクチンのニュースを追いかけてきてましたが、日本は政府行政の危機管理能力、政策実行能力や民間の技術力、メディアの報道姿勢など総合的な国力において、米欧どころか中国にも劣後していることがはっきりしたように思います。
残念なことですが、事実として受け止めるしかありません。
実際にワクチン接種を前にして、これまで感じていたことを振り返ってみたいと思います。
アメリカのワープスピード計画
従来通常10年、最短でも4、5年かかるといわれていたワクチンの開発のスピードアップを官民共同プロジェクトで推進したのはアメリカでした。
2020年5月15日に、トランプ政権下で”Operation Warp Speed”(ワープスピード計画)が発表されました。
コロナウイルスのワクチン開発資金を支援し、2021年初に有効なワクチンを3億回分用意し、接種開始を目指すというもので、予算は100億ドル(1兆円超)という巨大プロジェクトでした。
最終的に予算は180億ドルまで増額されました。
グラクソ・スミスクラインのワクチン部門トップだったモンセフ・スラウイ博士が首席顧問として就任、さらにギュスターブ・ぺルナ陸軍大将がCOO(最高執行責任者)として任命されています。
各製薬会社と複数の省庁をまたぐ横断的な大規模プロジェクトで、軍人がCOOに任命されていることから、当初よりアメリカは戦時体制で対応していたことがわかります。
8月までに順次6社がパートナーとして選定され、開発資金援助を受け、直ちに臨床試験と製造準備に入りました。
尚、今日本で承認されているファイザー社(開発 バイオンテック)のワクチンは、ワープスピード計画から政治的独立性を保つとして、開発資金援助を受けていません。
(バイオンテック社がドイツから開発資金援助を受けています。)
開発資金援助は受けませんでしたが、7月にアメリカ政府が2億回の先行発注を出して、ワープスピード計画に組み入れています。
そして、7月からモデルナとファイザーが3万人超を対象とする大規模臨床試験に入りました。
日本にワープスピード計画を紹介したのは、メディアではなく投資家だった
アメリカのワープスピード計画は、マンハッタン計画をも連想させる巨大な官民共同の科学プロジェクトでしたが、日本ではほとんど報道されませんでした。
感染者数や死亡者数が欧米より2桁低く、当時ワクチンの必要性があまり意識されていなかったこともあるでしょう。
医療関係者の間でも目先の対応に終始し、ワクチンのことはあまり話題には上りませんでした。
ワープスピード計画は、トランプ政権が音頭を取っていることもあり、トランプに批判的な日本のメディアは明らかに報道を控えていました。
アメリカの前例のない科学プロジェクトである、ワープスピード計画の概要は、主に投資家の人たちを通じて日本に紹介されました。
私もこれらの記事を読んで、アメリカの製薬業界の革新的な技術と、予算の規模に驚きました。
日本でも大阪大学とアンジェスがワクチンを開発するというニュースがでましたが、予算や臨床試験の規模が2ケタ違っており、とても太刀打ちできるものではないと感じました。
もちろん、ワープスピード計画にノミネートされた数社の株を購入しました。金額は大したことないですが。
日本でワクチンの報道がちらほら出始めたのは、アメリカでファイザーーバイオンテックが臨床試験を終了し、承認申請を出すかという段階になった11月になってからでした。
日本でのワクチンの臨床使用承認は、厚労省のムダな手続きを経るために、アメリカから2カ月遅れた
7月から始まった大規模臨床試験について、11月8日にファイザーがサマリーをプレスリリースしました。
とてもポジティブな内容でした。
ちょうどアメリカの大統領選挙と重なり、日本の大手メディアではワクチンの進捗について好意的な報道はほとんどありませんでした。
報道があったとしても、リスクを強調するものでした。。
当時の日本での感染者は全国でも1000人以下で、医療体制もひっ迫しておらず、メディア的にもワクチンはあまり注目される話題ではなかったのでしょう。
一部の医療従事者からは、冬季の感染拡大を危惧する声がありましたが、ワクチンの必要性について医師会関係者から切実な要望は出ていませんでした。
アメリカではすでにこの時期から、承認後のロジスティクスに関心が移っていました。
11月20日にファイザーがFDA(米国食品医薬品局)に緊急承認申請をしました。
そして12月10日にFDAの緊急承認許可がおりました。
日本での治験も10月20日から開始されていました。
登録症例数はわずか160例であったにも関わらず、厚労省は従来通りのお役所仕事で対応しました。
結局、日本での承認申請は翌年1月30日で、承認は2月15日でした。
アメリカとのタイムラグは、2ヵ月間です。
わずか160例の日本国内での手続きを踏むために、緊急事態宣言を挟んだ2ヵ月間をムダに費やしたことになります。
アメリカでは3万例以上で安全性と効果を確認しているのです。
日本での160例の臨床試験など、省略しても良いくらいです。
緊急事態宣言を再度出さざるを得ないところまで医療体制が逼迫した以上、FDAの承認を追認する以外の選択肢は、ないのですから。
まとめ
・アメリカは最新の技術で従来の常識を覆す短期間でのワクチン開発を成し遂げた。
・その背景には、ワープスピード計画という軍人をトップに据えた戦時体制の官民共同プロジェクトがあった
・アメリカは、開発費用と製造設備について、トランプ政権が資金面でのリスクを全て引き受けた
・有効性と安全性の確認に際しては、数万人のアメリカ人がリスクをとって臨床試験に参加した
・ワープスピード計画では、ワクチン承認後の接種体制、輸送備蓄をも当初より想定して、軍人を実行責任者に任命して準備していた。
この時期になって、ワクチン確保ができないとオロオロしている日本は、はっきり言って滑稽としかいいようがありません。
これまで何一つリスクをとらず、準備もできていない日本に、だれが貴重なワクチンを回したいと思うでしょうか。
本来、このような事態を想定し警鐘を鳴らすのはメディアの役割ですが、実態に合わない恐怖を煽る報道に終始し、いたずらに事態を悪化させました。
日本にワクチンの情報をいち早く提供したのは、投資家でした。
医師会などの業界団体は、事態を打開する動きを全く見せず、ひたすらに患者を避けるべく、行政に対して国民の行動の制限を要請するばかりでした。
政治、行政組織、技術、メディアなどあらゆる分野において残念ですがアメリカとの決定的な差を痛感しました。
今後、投資をするなら、日本ではなくアメリカです。