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シン・エヴァンゲリオン劇場版:||の感想雑記ー日本経済が強かった時代の物語

レイトショーでシン・エヴァンゲリオン劇場版:||を見てきました。

 

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ネタばれになるのかな?

テレビアニメから25年、前作から8年を経て、日本のおかれている状況もだいぶ変わりました。

テレビアニメ当時はバブルの余韻みたいなものがまだ残されていたとおもいます。

劇場版の頃は不況真っただ中だったと記憶していますが、世紀末の終末感と謎設定があいまって大ヒットしたように思います。

今回、エヴァンゲリオンシリーズの完結版とのことで、思いついたことをいくつかかいておきます。

 

庵野監督も年を取った

当然ですが庵野監督も年をとりました。

里の生活の描写が続きます。

レイが田植えをしたり・・・

 

庵野監督は1960年生まれですが、昭和50年代頃まで日本の各地に里山などの自然は残っており、多くの人の原風景となっているようです。

ホリエモンこと堀江貴文氏も田植えをして自分が作った米で酒を飲みたい、里山の生活は豊かだみたいなことを言い出しています。

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50代、60代になると、多くの日本人は子供の頃に遊んでいた自然環境を懐かしんで、そちらに戻っていくということなのでしょう。

 

設定や謎解きに意味はなくなった

2時間半も延々と謎設定の戦闘が続きます。

 

旧劇場版の時は、設定について色々な人が色々な解釈を施しあーでもないこーでもないと論じていたような気がします。

 

旧劇場版の謎設定や、テレビアニメシリーズの投げ出しなどが論議になった反省でしょうか。

その後のマンガやアニメでは、設定をしっかり作り込んで、読者や視聴者にも分かる形できっちり伏線を回収することが多くなりました。

 

また、テクノロジーが進歩しても巨大な構造物を動かすことが容易でないことがはっきりしてきました。

人間の手で作ったような構造物は、東日本大震災のような自然の力の前では全くの無力です。

そういう意味では、巨大ロボットが戦うような物語のリアリティは以前よりさらに持ちにくくなっていると思います。

 

今回の完結編では、リアリティの追求をほぼ放棄し、開き直って謎設定を延々と繰り返すことで、昔からのファンの「こだわり」を吹っ飛ばしたような気がします。

 

エヴァの設定にリアリティがあった時代

エヴァが生まれたのは1995年。

当時は携帯電話が普及しておらず、インターネットもまだ家庭に普及していませんでした。

 

バブルが崩壊したといっても、家電や電子機器、半導体などで日本は世界の先端を走っていました。

工業製品においても、あらゆる分野で日本製の品質は高いと評価されており、日本人も皆そう考えていました。

 

今から振り返れば「人智を超えたオーバーテクノロジーが日本で開発される」という設定には、当時の日本の技術力への自信のようなものが背景にあったと思います。

 

脳神経を直接外部と接続して、何かを操作するというコンセプトも、リアリティがなくなりました。

当時は「攻殻機動隊」とかでも似たようなコンセプトがありました。

 

現在の日本の状況はどうでしょうか。

世界の工場としての地位を中国に譲り、バイオとハイテクではアメリカの背中も見えません。

日本発の技術が世界の運命を動かしていくというストーリーが、成立しにくくなっています。

 

今、マンガやアニメであふれている物語が、転生モノばかりであるのは偶然ではありません。

舞台そのものを日本の現実から移動させないと、チャンバラができなくなっているのでしょう。

 

庵野監督の描く「現場」

気になったのが、いわゆる「現場」の描写です。

「何分、何時間以内になんとかしろ」みたいな、トップからの無茶ぶりを現場がなんとかする、という描写が繰り返し出てきます。

 

でも、これで何とかなる現場って、アニメ制作とかの工数が見えている現場だけです。

 

 

ほとんどの場合、トップの無茶ぶりには極端に不完全な仕事で応えるしかない。

ゼロ回答になることも珍しくありません。

たいていの現場は、気合いでは「どうにもならない」。

 

コロナウイルスのワクチンの接種を考えてみましょう。

ワクチンの接種みたいな、シンプルなタスクについても、実際に何十万人を相手にするとなると、冷蔵庫から、場所の確保から、輸送から、接種票の配布から何とかしろではどうにもならないことばかりです。

そもそも、ワクチンそのものが作れなくて入ってこないわけですが。

 

そういえば敵対組織は、現場スタッフの顔が全くみえないです。

どうやって運営しているのでしょう。

 

日本の里山に回帰した庵野監督ですので、彼の描く現場に限界があることはよく分かっていると思います。

今後の作品で「現場」がどのように描写されていくのか興味があるところです。

 

 

ともかく、シンジ君は無事に成仏した

父親との邂逅など色々ありましたが、結局はアスカの「あんたのことが好きだったんだと思う」の一言が決め手だったようです。

 

多分シンジ君はその一言で成仏できました。

 

恐らくファンも同じでしょう。

感想でも、「きっちり終われてよかった」というようなものが多かったように思います。

 

ラストではシンジ君は大人になって、彼女(パイロットの1人)と交際しているらしいシーンがありました。

ラノベの転生モノとは異なり、前世に未練を残さず成仏できたので、転生後はもう新たな冒険(ストーリー)を始めなくてもよいのです。

 

まとめ

2時間35分の大作で、途中トイレに立つ人もチラホラいました。

館内は3割程度の入りでした。

長すぎて、子供と行くには向かない映画ですので、鬼滅ほどはヒットしないでしょう。

 

きっちり成仏を見届けられてよかったです。合掌